特定優良賃貸制度を利用すると、一定の基準を満たした広い住宅に安く住むことができます。
対象となる中堅所得ファミリー世帯の方は検討する価値があります。
この記事では、特定優良賃貸制度を利用するための条件とメリット・デメリットについて解説していきます。
特定優良賃貸住宅とは
特定優良賃貸住宅(略して特優賃)とは「特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律」に則って建設された住宅のことで、中堅所得者向けの良質な賃貸住宅の拡大を目的に作られました。
一定の条件をクリアすると、初期費用がかからなかったり、家賃補助により通常の賃貸より安く借りられたりします。
建物は、住宅供給公社が直接建設して管理しているものや、民間のオーナーが建設した賃貸住宅を借り上げるものなどが存在します。
特定優良賃貸住宅に指定されるには法律に定められた基準をクリアする必要があります。
例えば以下のような基準が設定されています。(自治体により異なります)
・専有面積は原則50㎡以上125㎡以下で、2つ以上の居住室がある
・耐火構造または準耐火構造である
・台所、水洗便所、収納設備、洗面設備及び浴室を備えている
また、バリアフリーやオートロックの物件も多くあります。
特定優良賃貸住宅の制度は1993年からスタートしたので、現在では30年以上経っていることになります。
「入居者負担額が毎年3.5%引き上げられ、これが家賃にすりつくまで最長20年間補助が行われる」という前提があるため、現在では特優賃としての扱いが終了し、一般賃貸へと切り替わった物件も増えています。
ですが、自治体により基準を変えて入居募集をかけている場合があります。
入居を希望する場合は、お住まいの自治体の情報を調べてみることをおすすめします。
特定優良賃貸住宅に入居する条件
特定優良賃貸住宅に申込むためには、自治体ごとに定められている条件をクリアし、審査に通る必要があります。
条件は自治体により異なってきます。例を紹介します。
【例1】 愛知県名古屋市の場合
●小学校入学前の子どもを持つ世帯で、かつ所得月額が26万8千円以下の世帯の方が特定優良賃貸住宅に入居する場合、家賃の2割が減額
(条件)
・自ら居住するための住宅を必要とし、現に住宅に困窮している方。
・現に同居し、または同居しようとする親族を有する方。
(注)婚約者との申込も可能ですが、入居日から1ヶ月以内に婚姻できる場合に限ります。
・日本国籍を有する方または外国人登録をし在留資格のある方。
・入居する世帯全員の収入の総額が、収入基準の範囲内であること。
(注)収入基準・・・各種控除後の所得月額が20万円以上60万1千円以下であること。ただし、今後所得の上昇が見込まれる方で所得月額が15万3千円以上の世帯についても入居可能。
【例2】 京都府京都市の場合
●入居者は国と京都市から家賃補助が受けられ、契約家賃から家賃補助を差し引いた額(入居者負担額)を支払う
(条件)
・自ら居住するための住宅を必要としていること。自家所有者は原則として申し込むことができません。
・現に同居している親族があること,又は同居しようとする親族があること。(単身で住み続ける予定の方は申し込むことができません。) ・入居される方の世帯全員の月額所得の合計が,158,000円以上601,000円以下であること。
ただし,月額所得の合計が,158,000円以上200,000円未満の場合は,所得の上昇が見込まれる世帯に限ります。
・入居される方と同等以上の収入がある連帯保証人を立てることができること。又は連帯保証人と同等の保証会社による保証を受けることができること。
特定優良賃貸住宅のメリット
特定優良賃貸住宅に住むメリットについて説明します。
家賃の補助がある
特定優良賃貸住宅には、自治体や国から家賃補助があります。
基準を満たした優良な住宅に安く住めることは大きなメリットです。
仲介手数料、礼金、更新料が不要
一般的に賃貸の契約時に必要になる仲介手数料や礼金、数年に一度かかる更新料がかからないことが多いです。(例外もあります)
入居に伴う初期費用が安く抑えられることもメリットです。
つくりが広いことが多い
特優賃として認められるには、先述のとおり面積や構造について一定の基準を満たす必要があります。
ファミリー向けを想定しているので、間取りはもちろん、敷地そのものや共用部も広々とつくられていることが特徴です。
特定優良賃貸住宅のデメリット
特定優良賃貸住宅に住むデメリットについて説明します。
入居条件が厳しく、一人暮らしやシングルマザーは入居できないケースが多い
先述のとおり、入居には条件があります。
最もネックになるのは「世帯所得月額に制限があること」で、誰でも申し込みできるわけではありません。
また、近年、特定優良賃貸住宅への入居を希望するシングルマザーなどのひとり親が増えています。
条件に「シングルマザーだから入居できない」という要件は基本的にありませんが、所得制限の条件が当てはまらず入居を断念せざるを得ない世帯が多いのが現状です。
合わせて確認しておきたいのは、そもそもファミリー世帯向けなので、一人暮らしの方は申込することができないということです。
毎年家賃(入居者負担額)が増加する
前提として、入居者負担額は毎年3.5%引き上げられ、これが家賃にすりつくまで最長20年間補助が行われる、という形になります。
自治体によりますが、所得に応じて家賃を決める場合は、所得が増えた翌年に家賃が上がる点にも注意が必要です。
建物や住宅設備が古い
制度開始から契約している建物は、現在築数十年となっている物も多く、設備が古くなっているところも多いと考えられます。
リノベーションをしている場合もありますが、基本的に古いものであるということは頭に入れておく必要があります。
まとめ
条件を満たせば、特定優良賃貸住宅に安く住むことができます。
制度スタートから時間が経っているので、条件や内容は自治体により見直されています。
利用を検討する場合は、お住まいの自治体の情報を調べてみましょう。