大きな災害が起こり、まだローンの残っている自宅が被災してしまった場合、今後の生活の大きな負担となってしまいます。
そのような状況になった時、「被災ローン減免制度」を利用することで住宅ローンの減額や返済免除を行える可能性があります。
この記事では、被災ローン減免制度の概要やメリット・デメリット、利用の条件や手順について解説していきます。
被災ローン減免制度とは
被災ローン減免制度とは、破産手続きをしなくても、住宅ローンの減額や返済免除ができる制度です。
大きな災害が起こった場合、住宅が被災して住めない状態でローンだけが残ったり、自宅を再建するために再度借り入れが必要となり、結果二重ローンに苦しんだりするケースが数多く発生すると予測されます。
そのような際に、災害による自己破産を防止する目的で作られました。
2011年の東日本大震災の際に、被災者を対象に特例としてローンを減免する制度が設けられ、2016年に入り熊本や大分などで地震が相次いだことを受け、新たに「自然災害債務整理ガイドライン」が作られ、当制度の運用が開始されることとなりました。
万が一の際に対象となる人が適切に制度を利用できるように、金融庁や弁護士会が情報提供に積極的に乗り出しています。
被災ローン減免制度を利用できる条件
被災ローン減免制度は、以下の条件を満たす人が対象となります。
●地震の被害によって「ローンが返せない」あるいは、「返せなくなる見通し」になった
●世帯の年収が730万円未満
●ローンの返済額と、新たに借りる家の家賃などの負担の総額が年収の40%以上
これらの条件は目安であり、状況によっては世帯の人数や世帯主の年齢、ローンの残高などが考慮されます。
当てはまらない項目があったとしても、一度相談してみることをおすすめします。
被災ローン減免制度のメリット
被災ローン減免制度の主なメリットは以下のとおりです。
●弁護士などの手続き支援を無料で受けられる
●生活再建のための預貯金を500万円まで残せる
●金融機関の信用情報・ブラックリストに載らない
災害時に対象となってしまった場合は、被災ローン減免制度が生活の立て直しに大いに役立つことになります。
万が一の際には積極的に活用するべき制度です。
被災ローン減免制度のデメリット
被災ローン減免制度のデメリットとしては以下の点が挙げられます。
●法人は利用することができない
制度の対象が個人となっているため、法人は利用することができません。
被災ローン減免制度のガイドライン 6ステップ
被災ローンの減免制度の利用方法は以下のとおりです。
金融機関に、被災ローン減免制度の手続きを申し出る
まずは、一番多くローンを借りている金融機関に被災者本人が被災ローンの減免制度を利用する旨を申し出ます。
その際に、借入先、借入残高、年収、資産などの状況について答えられるようにしておきます。
地元の弁護士会館で「登録支援専門家弁護士」の支援を依頼する(無料)
申し出から10営業日以内に金融機関から同意書が届きます。
その「同意書のコピー」と「登録支援専門家弁護士委嘱依頼書(弁護士会館にある)」を持って、登録支援専門家弁護士による手続き支援を依頼します。
通常弁護士への依頼は有料ですが、被災ローンの減免制度における利用においては無料となります。
債務整理を申し出る
弁護士が決まってから3か月以内に、被災者本人が全対象債権者に債務整理の申出を行い、財産目録等を提出します。
基本的には決まった登録支援専門家弁護士のアドバイスを受けながら手続きを進めることになります。
調停条項案の作成・提出・説明を行う
被災者本人が対象となる債権者全員と協議して調停条項案を作成し、債務整理開始申し出から3か月以内に全対象債権者へ提出します。
1か月以内に対象債権者全員から同意又は不同意の返信が行われます。
簡易裁判所で特定調停の申立てを行う
被災者自身で簡易裁判所に出向き、特定調停の申立てを行います。
通常、特定調停の申し立てには手数料を裁判所に支払いますが、被災ローンの減免制度における利用においては無料となります。
(債権者との書類のやりとりにかかる郵便切手代などは、被災者側が負担)
調停条項が確定される
裁判所で調停条項が確定した後は、調停条項の内容に従って弁済を開始します。
この調停条項は、通常の特定調停と同じように債務名義となります。
まずはローンを組んでいる金融機関に申し出ること、そして、地元の弁護士会館で弁護士の選任を依頼することになります。
その後は弁護士の指示に従って手続きを進めれば問題ありません。
まとめ
被災ローン減免制度を利用することで、被災してしまった際に住宅ローンの減額や返済免除を受けることができます。
いつ何時災害に合うかは分かりません。
万が一に備えて、このような救済制度があることを覚えておくことをおすすめします。
義援金、弔慰金、地震保険金などをローンの支払いに充てたり、新たなローンを組んだりする前に弁護士に相談するようにしましょう。