老後の生活の要となる年金ですが、受け取れる額が大きくない場合もあるため、将来を不安に感じている方が多いと言われています。
「付加年金」という年金制度では、対象者に限り月々400円の負担で、将来受け取れる年金額を増やすことができます。
この記事では、付加年金の概要、加入の条件、メリットデメリット、手続きの方法について解説していきます。
付加年金とは?
付加年金とは、国民年金を月当たり400円上乗せして払うことで、将来的に受け取れる年金額を加算分増額できるという制度です。
付加年金を利用すれば老齢基礎年金の受給額が生涯増額されることになるので、老後の生活資金を通常より多く備えることができます。
付加年金で加算されるのは「上乗せ分の保険料の納付月数×200円」の金額となっています。
払った保険料がそのまま加算されるわけではないという点には注意が必要で、受け取る期間が短い場合(早くに亡くなってしまった場合)は、元本割れを起こすことも考えられます。
付加年金の申し込み方法
付加年金の加入手続きは、市町村役場や年金事務所の「保険年金課」で行うことができます。
付加年金の保険料の納付は申し込んだ月の分からとなります。
手続きの際には、以下のものを準備しておくことが必要です。
・年金手帳
・基礎年金番号通知書またはマイナンバーカード
・本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
マイナンバーカードを持っていない場合は、通知カードまたは個人番号の表示がある住民票の写しと本人確認書類でも申請が可能です。
また、本人以外が申請する場合は委任状が必要となりますので、該当する場合は事前に保険年金課に相談しに行くことをおすすめします。
付加年金に加入するメリット
付加年金に加入するメリットとして以下のことが挙げられます。
・将来受け取れる年金の額を増やすことができる
・67歳以降の受け取りで、2年で納付した保険料のもとが取れる(年金額が納付した付加年金の金額を超えるため)
・老齢基礎年金の繰り下げ受給(最大75歳)をすると付加年金も同額で増額される
・付加年金として払った保険料は全額が所得控除の対象となる
付加年金は、将来的に受け取れる年金額に加算されていくので、実質的に68歳以降に受け取れる増額分は全てがプラスになります。
老齢基礎年金の繰り下げ受給や、付加年金に対する所得控除を合わせて利用することで、メリットがさらに大きくなります。
付加年金に加入するデメリット
一方、付加年金に加入するデメリットとして以下のことが挙げられます。
・年金受給前(65歳前)に亡くなっても納付した付加年金は返金されない
・年金受給スタート~67歳未満に亡くなると、支払った付加年金と年金受取額の差額分がマイナスになる(元本割れを起こす)
・老齢基礎年金の繰り上げ受給(最小60歳で年金受給をスタート)をすると付加年金も同額で減額される
・付加年金を納めている途中で納付を止める場合は付加保険料納付辞退申出書の提出が必要となる
・確定拠出年金の拠出限度額から国民年金の付加保険料分が控除される
・iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している場合、拠出限度額が減額される
付加年金は老齢基礎年金に加えて受け取るものなので、万が一年金受給スタートの65歳以前に亡くなってしまうと受け取ることができません。
また、年金を受け取り始めたとしても、2年が経過する前に亡くなると支払った金額の方が大きい状態になり、元本割れを起こすことになります。
付加年金は「老齢基礎年金+付加年金を3年以上受け取ること」を前提としているので、それ以前に亡くなってしまうとメリットは一切ないということになります。
また、iDeCoの拠出限度額は月額68,000円(年額816,000円)ですが、付加年金で毎月400円を払い込むと、67,600円となります。
そうなると拠出限度額は811,000円(67,600円×12ヶ月=811,200円、iDeCoは千円単位なので切り捨て)まで下がることとなり、5,000円の減額となってしまいます。
付加年金に加入できる条件
付加年金は国民年金が対象となる制度ですので、誰でも加入できるわけではありません。
付加年金に加入できる人、できない人は以下のように分類されます。
付加年金に加入できる人
・国民年金第1号被保険者(20〜60歳未満の自営業、個人事業主、フリーランス、学生など)
・65歳以上の人を除く任意加入被保険者
付加年金に加入できない人
・第2号被保険者(会社員や公務員など)
・第3号被保険者(第2号被保険者に扶養される家族)
・国民年金保険料の免除・猶予を受けている人
・国民年金基金の加入者
主に「国民年金第1号被保険者」が対象となるので、会社員や公務員は対象外であることに注意が必要です。
付加年金に加入できる期間
・20歳〜60歳までの最大40年間
納付期限を経過した場合は、期限日から起算して2年間までならさかのぼって納付が可能です。
付加年金はさかのぼって支払えるか
「付加年金は過去の分をさかのぼって支払えるのか」はよくある質問です。
こちらについては、以下のようになっています。
●過去の制度(現在は適用されません)
平成28年4月から3年間の時限措置として、付加年金保険料の特例納付制度が実施されました。
この制度により、過去、納めることができなかった付加年金保険料を過去10年間までさかのぼって納めることが可能でしたが、3年間限定だったため、平成31年3月31日をもって終了しています。
●令和6年現在の制度
結論としては、令和6年現在、さかのぼって付加年金保険料を納付することはできません。
納付開始月の考え方として、付加年金保険料の納付は「申し出をした日の属する月」分から開始することになります。
例えば、令和6年4月中に付加保険料の納付を申し出た場合、令和6年4月分から付加年金保険料を納付することができます。
その際に、令和6年3月分以前にさかのぼって付加年金保険料を納付することはできません。
なお、申出書を郵送により提出した場合は、上記の提出先において申出書を受付した日の属する月分から開始されます。
「さかのぼって納付できない」ことを念頭に、計画的に手続きを進めることをおすすめします。
まとめ
付加年金は、自営業、個人事業主などの国民年金第1号被保険者に対し、国民年金を上乗せして払うことで、受け取れる年金額を増額させるという制度です。
国民年金だけでは心もとないという方のための支援策で、月々400円を上乗せすることで将来に備えることができます。
67歳以上の受け取りでは支払った額に対してプラスになりますが、それより早く亡くなってしまった場合はマイナスになるリスクもあります。
日本の平均寿命は年を追うごとに高くなっていますので、対象となる方は、月々の負担と元本割れのリスクを踏まえた上で、老後生活のために検討してみることをおすすめします。