所得が一定の水準より低い年金受給者の方には、通常の年金に加えて「年金生活者支援給付金」という給付金を受け取ることが可能です。
年金生活者支援給付金制度は、2019年の消費税の改訂により、税率が10%に引き上げられたことに伴い設置されました。
この記事では、年金生活者支援給付金の種類と支給条件、給付額、申請の方法について解説していきます。
年金生活者支援給付金とは
年金生活者支援給付金とは、公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準額以下の方に、年金に上乗せして支給される給付金です。
年金生活者給付金は「老齢(補足的老齢)生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」の3つの種類があります。
いずれも年金支給日である偶数月の中旬に、2ヵ月分がまとめて支給されます。
支給を受けるにはそれぞれ条件を満たす必要がありますが、条件を満たしていても以下の3点に該当する場合は支給対象外となるので注意が必要です。
●日本国内に住所がない人
●年金が全額支給停止になっている人
●刑事施設等に拘禁されている人
老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金
老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金は、老齢基礎年金を受給していて、なおかつ所得が少ない人に支給される給付金です。
老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の支給対象者
老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の支給条件は、以下の3点をすべて満たしていることです。
(1)65歳以上の老齢基礎年金の受給者である
(2)同一世帯の全員が市町村民税非課税である
(3)前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が878,900円以下である
※収入には、障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。
※778,900円~878,900円以下の方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の給付額
老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の給付額は、5,310円/月を基準に、保険料納付済期間等に応じて算出され、次の(1)と(2)の合計額となります。
(1)保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5,310円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
(2)保険料免除期間に基づく額(月額) = 11,333円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
老齢年金生活者支援給付金の支給により所得の逆転が生じないようにするため、前年の年金収入額とその他の所得額の合計が778,900円~878,900円以下である方には、(1)に一定割合を乗じた「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
保険料納付済期間のほか、前年の年金収入額とその他の所得額の合計によって給付額が変わります。
給付金額の算出のもととなる保険料納付済期間等は、年金証書や支給金額変更通知書等で確認することができます。
保険料免除期間に乗ずる金額は、毎年度の老齢基礎年金の額の改定に応じて変動することに注意が必要です。
(例)
【昭和31年4月2日以後生まれの場合で、被保険者月数480月のうち納付済月数が480カ月、全額免除月数が0カ月の場合】 (1)5,310円 × 480 / 480月 = 5,310円
(2)11,333円 × 0 / 480月 = 0円
合計5,310円 + 0円 = 5,310円
よって、給付額は月額5,310円となります。
障害年金生活者支援給付金
障害基礎年金を受給している人で、なおかつ支給条件を満たしている人は、障害年金生活者支援給付金が支給されます。
障害年金生活者支援給付金の支給対象者
障害年金生活者支援給付金の支給条件は、以下の2点をすべて満たしていることです。
(1)障害基礎年金の受給者である
(2)前年の所得が4,721,000円以下である
※障害年金等の非課税収入は、年金生活者支援給付金の判定に用いる所得には含まれません。
※所得の金額は、扶養親族等の数に応じて増額されます。
障害年金生活者支援給付金の給付額
障害年金生活者支援給付金の給付額は以下のようになります。
●障害等級が2級の場合: 5,310円 / 月
●障害等級が1級の場合: 6,638円 / 月
遺族年金生活者支援給付金
遺族基礎年金を受給している人で、なおかつ支給条件を満たしている人は、遺族年金生活者支援給付金が支給されます。
遺族年金生活者支援給付金の支給対象者
遺族年金生活者支援給付金の支給条件は、以下の2点をすべて満たしていることです。
(1)遺族基礎年金の受給者である
(2)前年の所得が4,721,000円以下である
※遺族年金等の非課税収入は、年金生活者支援給付金の判定に用いる所得には含まれません。
※所得の金額は、扶養親族等の数に応じて増額されます。
遺族年金生活者支援給付金の給付額
遺族年金生活者支援給付金の給付額は以下のようになります。
●5,310円 / 月
ただし、2人以上の子が遺族基礎年金を受給している場合は、5,310円を子の数で割った金額をそれぞれに支給することになります。
(例) 3人の子が遺族基礎年金を受給している場合「5,310円÷3=1,770円 / 月」となり、一人あたりの受給額は月額1,770円となります。
※計算結果に50銭未満の端数が生じたときは切り捨て、50銭以上1円未満の端数が生じたときは1円に切り上げて計算します。
年金生活者支援給付金と生活保護は併用可能
年金生活者支援給付金と生活保護は併用可能となっています。
生活保護制度では他法他施策が優先されるという性質上、年金などの受給可能な給付金は全て受けておかなければなりません。
生活保護の費用は、受給している年金と年金生活者支援給付金、その他の収入や資産などの評価額と最低生活費の差額から算出されることになります。
年金生活者支援給付金の申請方法
年金生活者支援給付金の申請には、年金生活者支援給付金請求書の提出が必要です。
年金生活者支援給付金請求書は、基礎年金を受給しており、新たに年金生活者支援給付金を受け取ることができる方へ、毎年9月1日から順次送付されます。
【申請の流れ】
(1)請求書に、氏名などを記入してお近くの年金事務所に提出
(2)審査結果の通知が日本年金機構から到着
(3)お支払い月の上旬に、振込通知書が日本年金機構から到着
(4)振込通知書に記載のある給付額が年金に上乗せ支給
不明な点がある場合は、お近くの年金事務所にご相談下さい。
まとめ
年金生活者支援給付金は、所得が一定の水準より低い年金受給者の方に上乗せして給付される支給金です。
老齢、障害、遺族それぞれの年金により支給条件や給付額が異なりますので、該当される方は確認することをおすすめします。
申請や問い合わせ先はお近くの年金事務所になります。