セルフメディケーション税制とは、指定の医薬品の購入費用が高額になったとき、一定の条件を満たせば医療費控除の特例として所得控除を受けることができる制度です。
スタート時よりも対象品目が拡大され、手続きも簡易になっているので、節税するチャンスです。
この記事では、セルフメディケーション節税の概要と条件、節税のシミュレーションなどについて記載します。
セルフメディケーション税制とは
セルフメディケーション税制とは、端的に説明すると、対象となる医薬品を薬局で年間12,000円以上購入した場合、確定申告をすると税金の控除が受けられるという制度です。
医療費控除の特例として2017年からスタートしました。
医療費控除と同じく、確定申告すると、所得税の一部が還付されたり、翌年度の住民税の負担が少し軽くなるなどのメリットがあります。
当初は5年間の特例として始まりましたが、2022年よりさらに5年間延長されることが決まりました。
医療費控除は、1年間に支払った医療費の合計が10万円を超えた場合に、超えた額が所得から控除されて税金が還付・減額されるという制度ですが、健康な場合はなかなか10万円の医療費を払うということはありません。
ですが、ちょっとした身体の不調などで例えば市販の風邪薬や鼻炎薬、目薬などの「OTC医薬品」を利用することはままあるでしょう。
そのような場合に適用できるのがセルフメディケーション税制となっています。
自分自身の健康管理を心がけると共に、軽い症状であればOTC医薬品を利用することによって、自分で自分の健康を管理すること(セルフケア)を国として推進しようという目的からこの制度は作られました。
セルフメディケーション税制が適用される3つの条件
セルフメディケーション税制が適用されるには、いくつかの条件があります。
セルフメディケーション税制の対象となる人
セルフメディケーション税制の対象となるには、以下の条件を満たしている必要があります。
1)確定申告をする人が、所得税・住民税を納めていること
2)確定申告をする人が、下記の健診など健康のための「一定の取り組み」を受けていること(いずれか1つでOK)
・保険者が実施する健康診査(人間ドック、各種健診・検診等)
・市区町村が健康増進事業として行う健康診査(歯周疾患検診、骨粗しょう症検診、肝炎ウイルス検診、生活保護受給者等を対象とする健康診査等)
・予防接種(定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種)
・勤務先で実施する定期健康診断(事業主健診)
・特定健康診査(いわゆるメタボ健診)、特定保健指導
・市町村が健康増進事業として実施するがん検診
※市町村が自治体の予算で住民サービスとして実施する健康診査は対象になりません。
セルフメディケーション税制の対象となる購入金額
セルフメディケーション税制を適用するには、対象となるOTC医薬品の1年間(1月から12月)の購入費用が12,000円を超える必要があります。(所得金額が200万円未満の人は所得金額の5%)
超えた額が所得控除の対象となります。
医療費控除と同じように、申告する人と扶養している家族、それぞれの購入費用を足すことができますので、金額のカウントは確定申告する人の世帯で行って問題ありません。
例えば、世帯主である夫が購入したOTC医薬品の購入費用と、扶養されている妻や子などの購入費用を足して12,000円を超えれば、対象になるということになります。
セルフメディケーション税制の対象となる医薬品
セルフメディケーション税制は、厚生労働省が指定する特定の成分・薬効のOTC医薬品が対象となります。
OTC医薬品とは、医師の処方箋がなくても薬局やドラッグストアで購入できる薬のことで、かぜ薬や頭痛薬など、多様な製品が市販されています。
全てのOTC医薬品が対象になるわけではないというところには注意が必要です。
2022年からは対象品目が拡大され、従来よりも制度を利用しやすくなりました。
最新の対象品目は、厚生労働省のホームページに掲載の対象品目一覧にて確認することが可能です。
購入の際に、パッケージにこちらのロゴが記載されているものが対象となります。
また、購入後レシートや領収書には対象商品にマークや注意文が付くなどしますので、購入後に確認することも可能です。
セルフメディケーション税制でいくら節税できるのか
実際にどれくらい節税できるのかを、医療費控除として適用した場合と比較して見てみましょう。
例)会社員の父、専業主婦の母、子ども2人の4人家族の場合
・所得は年間420万円(所得税率20%)とする
・市販薬の購入額は年間4万円とする
・医療機関での自己負担額は年間8万円とする
※市販薬はセルフメディケーション税制、医療費控除の双方の対象商品とする
●医療費控除を利用する場合
医療費控除の対象となる合計額…12万円
控除額は12万円-10万円=2万円 所得税…2万円×20%=4,000円
住民税…2万円×10%=2,000円
合計6,000円の減税
●セルフメディケーション税制を利用する場合
セルフメディケーション税制の対象となる額…4万円
控除額は4万円-1万2,000円=2万8,000円
所得税…2万8,000円×20%=5,600円
住民税…2万8,000円×10%=2,800円
合計8,400円の減税
この条件下では、セルフメディケーション税制を利用した方がお得になるということが分かります。
実際は所得により税率は変動しますし、セルフメディケーション税制では対象にならない医薬品の中にも、医療費控除では対象になるものもあります。
ご自身の所得と、実際購入している商品を確認して見ることをおすすめします。
セルフメディケーション税制における確定申告の方法
購入金額が12,000円を超えても、確定申告をしなければ減税されません。
例えば2023年の1月から12月の期間、対象のOTC医薬品の購入費用が12,000円を超える場合には、翌2024年に確定申告することで所得税の一部が戻り、翌年度(2024年度)の住民税の負担が軽減されることになります。
確定申告の一般的な受付期間は、毎年2月16日から3月15日です。
確定申告は書類でも行うことができますが、e-taxが便利でおすすめです。
国税庁のウェブサイトには確定申告書等作成コーナーがあり、金額などを入金すれば自動的に控除額や税金の還付額を計算することもできます。
まとめ
セルフメディケーション税制を利用するには
●確定申告をする人が、所得税・住民税を納めていること
●確定申告をする人が、健康診断など受診し、健康に留意している状態であること
●対象となるOTC医薬品の1年間(1月から12月)の購入費用が12,000円を超えており、そのレシートや領収書を保管していること
が条件となります。
対象品目も増えて申告が行いやすくなっているので、該当する方は確定申告を行うことで節税をすることが可能です。
市販薬の購入の際には意識して確認することをおすすめします。