仕事を探している時に、職業訓練を受講することで無料でスキルアップすることが可能です。
近年では職業訓練はハロートレーニングとも呼ばれており、訓練の種類や対象者が充実してきました。
この記事では、職業訓練(ハロートレーニング)の種類や対象者、受講するメリットやデメリット、申請の方法について解説していきます。
職業訓練(ハロートレーニング)とは
職業訓練(ハロートレーニング)とは、希望する仕事に就くために必要となる、職業スキルや知識などを職業訓練校で習得するための公的制度のことです。
「やりたい仕事はあっても、スキルや経験がない」「入社した後に、役立つ実践的なスキルを身に付けたい」といった悩みを抱えている人が、希望する職業に適したスキルを身に付けられます。
職業訓練(ハロートレーニング)を受けられる対象者
職業訓練給付金は、次のすべての条件を満たす人が受けられます。
●ハローワークに求職の申し込みをしていること
●雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと
●労働の意思と能力があること
●職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワークが認めたこと
まとめると、「働こうとする人」「働く人」すべてが対象ということになります。
職業訓練(ハロートレーニング)の種類
ハロートレーニングは対象ごとに種別分けがされています。
●離職者訓練
再就職を希望している離職者で、「職業に必要な技能、知識の習得による就職を希望している」「職業訓練の受講を希望している」人を対象に進める訓練です。
失業保険を受給しているかどうかも、要件のひとつとなっています。
「訓練期間は3カ月から1年」「テキスト代などの実費負担以外は無料」です。
●求職者支援訓練
「雇用保険の適用がなかった」「雇用保険の加入期間が足りず雇用保険の給付を受けられなかった」「雇用保険の受給がすでに終了した」「学卒未就職者」「自営廃業者」など、雇用保険を受給できない求職者が対象となる職業訓練です。
求職者支援訓練も、テキスト代などの実費負担以外は無料で行われます。
●在職者訓練
主に中小企業へ勤務している人を対象とした訓練です。
「生産性の向上」「業務改善」「新製品づくり」「機械・機器の基礎的な取扱い」など、現在従事している業務に必要となる専門知識・技能・技術のさらなる向上を目的としています。
在職者を対象としているため、2~5日程度と比較的短期間で終了します。
●学卒者訓練
中学校や高等学校の卒業者を対象として実施する職業訓練で、3つのコースがあります。
・中学、高等学校卒業者等を対象に1~2年間の訓練を行う普通課程
・高等学校卒業者等を対象に2年間の訓練を行う専門課程
・専門課程修了者を対象に2年間の訓練を行う応用課程
●障がい者訓練
障がいのある人を対象として行われる個々の状況に配慮したきめ細かな訓練です。
「国立職業リハビリテーションセンター」「国が設置、都道府県が運営する障がい者職業能力開発校」「府県が設置、運営している障がい者職業能力開発校」「一般の職業能力開発校」「社会福祉法人」「民間機関」などによって実施されています。
それぞれの職業訓練の特徴をまとめると、以下のようになります。
職業訓練(ハロートレーニング)で学べるコースの例
職業訓練(ハロートレーニング)で学べるコースの例を紹介します。
●機械
機械加工、板金溶接
●建築・造園
インテリアサービス、造園土木施行、マンション改修施工
●電気
電気工事、セキュリティサービス
●塗装・印刷
自動車塗装、グラフィック印刷
●情報
パソコン基礎、プログラミング、Webデザイン
●事務
経理、財務、医療事務
●福祉・介護
保育士、介護士
様々なジャンルが網羅されています。
職業訓練(ハロートレーニング)を受けるメリット
①原則受講料が無料
国が行っている公的な就職支援制度のため、原則、無料でさまざまな職業訓練を受けられます(テキスト代などの実費負担がある場合もあります)。
自己負担が少なくスキルを習得できる点は大きなメリットでしょう。
②規則正しい生活を送れる
ハロートレーニングの授業は土・日・祝日を除く毎日決まった時間に行われるため、在職中と同じように生活を送れます。
離職中は生活のリズムが崩れやすいものですが、規則正しい生活を送っていければ、就職が決まった際、新生活への適応もスムーズです。
③コースが豊富
「エクセルやワードといったパソコンスキル」「簿記の習得といったビジネス系」「医療事務や介護といった医療・福祉系」「NC旋盤・溶接・CAD・電気工事・ビル管理・住宅建築といった専門技能系」など、さまざまな分野からコースを選択できます。
④給付期間中にスキルが身に付く
ハロートレーニングの仕組みは、「失業保険を受給している間に職業訓練を受講できる」「失業保険を受給していない人でも、一定の条件を満たせば職業訓練受講給付金が支給される」。
経済的な余裕を確保しながら、安心して訓練を受けられます。
⑤国家資格取得・実地試験の免除
受講するコースによって異なるものの、「一定の条件を満たした場合、試験を免除される」「卒業後に試験を受ける場合、実地試験を免除される」といった優遇措置を受けられるため、早期就職に有利です。
⑥就職活動の選択肢が広がる
「未経験」「スキルや知識もない」場合、就職には困難が伴うものですが、ハロートレーニングの職業訓練で、専門知識やスキルなどを身に付けられれば、それをアピールできます。
それによって就職活動における選択肢を増やせるでしょう。
職業訓練(ハロートレーニング)を受けるデメリット
①受講までの過程が長く時間と労力がかかる
職業訓練校へ入所するまでに、「求職申し込み」「見学会への参加」「受講申し込み」「入所者選考」「選考結果発表」「入所前手続き」などを経ます。
受講開始までにある程度時間がかかることを想定しておく必要があります。
②離職期間が長くなる
訓練終了後まで正規就労を行うことができないので、結果的に離職期間が長引くことになります。
訓練期間中でも、アルバイトなどを行うことは可能です。
③収入が低く金銭的に困る場合がある
失業保険として受け取れる金額は、前職の給料の2/3です。
前職の月収が低い場合、失業保険だけでは生活の維持が困難になるかもしれません。
職業訓練(ハロートレーニング)に関する給付金
職業訓練(ハロートレーニング)には、受講する人を補助するための給付金制度があります。
①基本手当(失業保険)
雇用保険の失業手当のことで、失業保険の受給資格を持つ人が職業訓練を受講した場合、受講期間中に満額の失業保険を毎月受給できます。
受講期間中に失業保険の受給期間が終了する場合、受講終了まで支給期間が延長されます。
②通所手当(交通費)
自家用車やバイク、自転車で通所する場合は、条件を満たせば交通費が支給されます。
原則的に公共交通機関を利用することが想定されていますが、ハローワークから受講指示を受けた場合、ハローワークが算定した交通費が支給されます。
③受講手当
支給の目的は教科書の購入補助とされており、最大40日間、1日につき500円が支給されます。
最大20,000円の受給が可能なため、教科書代金の自己負担なく訓練を受けることもできる場合があります。
④職業訓練受講給付金
雇用保険を受給できない求職者の生活を支援する給付金で、ハローワークの支援指示が必要になります。
以下の3点が設定されています。
・職業訓練受講手当として月額10万円
・通所手当として上限を設けた上で職業訓練実施機関までの通所経路に応じた所定の額
・寄宿手当として、月額10,700円
職業訓練(ハロートレーニング)の申請の流れ
職業訓練(ハロートレーニング)の申請の流れは以下のとおりです。
●ハローワークで求職の申し込み
●受給審査(受講申込書をハローワークに提出)
●選考を受ける(面接、筆記試験など)
●合格者向け説明会に出席
受給審査の際には、次の書類が必要となります。
・個人番号確認書類(原本/マイナンバーカードなど)
・身元確認書類(運転免許証など)
・ハローワークから交付された各種様式(受講申込書など)
・直近3ヶ月以内に交付された住民票謄本の写しまたは住民票記載事項証明書(世帯の構成および続柄が記載されたもの)
・事前審査申請日の前月に得た申請者本人および全ての同居配偶者等の収入を証明する書類(賃金明細書など)
・申請者本人または同居配偶者等が保有する事前審査申請日の残高が50万円以上である全ての預貯金通帳または残高証明(直近1ヶ月以内に交付されたもの)
・給付金の振込先となる通帳 その他、ハローワークが求める書類
まとめ
職業訓練(ハロートレーニング)は、スキルを身につけたいと考えている求職中の人が、原則無料でスキルアップを行うことのできる国の公的な制度です。
特段就職を急いでいない場合は、自身のスキルと今後の展望を見据えて、スキルアップに時間を割くことも1つの方法です。
まずは、ハローワークの窓口で相談してみることをおすすめします。