もし災害や盗難などの被害にあってしまった場合、雑損控除の申告を行うことで所得税や住民税を減らすことができます。
万が一の際の助けになりますが、知らなければ恩恵を受けることができない制度です。
有事に備えて知識をつけておきましょう。
雑損控除とは「災害、盗難などで損害を受けた際に、所得控除を受けられる」制度
雑損控除とは「災害または盗難もしくは横領によって資産の損害を受けた場合に、一定の金額の所得控除を受けることができる」という制度です。
確定申告をする際などに所得から差し引くことができます。
所得税の対象となる所得の金額を抑えられるため、万が一の時の支出を減らす手段になります。
損害額が大きすぎて1年で控除しきれない場合は、翌年以降に繰り越して控除を受けることも可能です(3年間まで)。
雑損控除を適用するには確定申告が必須となります。
年末調整で適用を受けることはできませんので、必ず確定申告をするよう注意が必要です。
次の項目で、「資産」や「損害」が具体的にどのようなものを指すのかを見ていきましょう。
雑損控除の対象となる条件は、生活する上で必要な資産であることなど
雑損控除は、損害を受けた資産が、以下の2つの条件を両方満たした場合に控除が適用されます。
①条件を満たす人物が保有している資産であること
「納税者本人」または「本人と生計を一にする配偶者やその他の親族のうち、総所得金額が48万円以下の人物」が保有している資産が対象です。
例えば、本人名義の住宅が地震で損壊の被害を受けた場合や、収入のない配偶者の衣類などが盗難の被害にあった場合などが挙げられます。
②生活する上で必要な資産であること
住宅や通勤で使う自家用車、衣類や書籍など、日常生活を送る上で必要な資産のみが対象となります。
雑損控除の対象となる資産は、車や家財、お墓など
雑損控除の対象となる資産の例として、次のようなものが挙げられます。
●住宅(門、塀なども含む)
●車両(通勤等に使用するもの)
●家財(家具、什器、家電など)
●その他(衣類、書籍、墓石など)
逆に、対象外となる資産は以下のようなものが該当します。
●趣味や娯楽などの目的で所有する住宅(別荘、投資用マンションなど)
●趣味で購入したスポーツカーなど
●貴金属、骨董、書画、美術工芸品などで1個または1組の価額が30万円を超えるもの
●事業用の資産、棚卸資産
雑損控除の対象となる損害は、自然災害や盗難、シロアリ被害の修繕費など
雑損控除の対象となる損害は、以下の5つに分類されます。
①震災、風水害、冷害、落雷など、自然現象による災害
②火災や火薬類の爆発など、人為的な異常災害
③害虫などによる異常な災害
④盗難
⑤横領
「自然現象による災害」の具体例としては、地震、台風、豪雨などが挙げられ、その際に損害を受けてしまった自宅や自家用車などが対象となります。
「人為的な異常災害」は火事や爆発事故、「害虫などによる異常な災害」は自宅がシロアリ被害に合ってしまった場合などが例として挙げられます。
シロアリ駆除について「修繕に要した費用及びそのシロアリを駆除するための費用は雑損控除の対象となるが、シロアリの被害を事前に防止するための費用及びシロアリの駆除とともに行う予防のための費用は雑損控除の対象となりません。」と国税庁ホームページに記載があります。
このように、実際に被害にあった所有物の修繕は対象となりますが、予防のための出費は対象外になるということは注意すべき点です。
また、詐欺や恐喝は制度の対象外となるので、雑損控除は受けられません。
つまり、オレオレ詐欺の被害にあった場合などの被害額に対しては適用外となります。
雑損控除でいくら戻るか、計算方法と計算例をチェック
雑損控除は次の2通りの計算方法がありますが、雑損控除として申告できるのは、算出した金額が多い方の1つです。
(1)(損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
(2)(災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円
※「損害金額」とは、損害を受けた時の直前におけるその資産の時価を基にして計算した損害の額です。
例えば、総所得額500万円の人が、火災により100万円の損害を受け、原状回復費用として50万円を支払い、保険から40万円を受け取ったというケースを想定してみます。
この場合、
(1)の計算:100万円+50万円-40万円-500万円×10%=60万円
(2)の計算:50万円-5万円=45万円
となり、(1)の計算が適用され、雑損控除の金額は「60万円」となります。
雑損控除の確定申告の手続き方法と必要書類
雑損控除の手続きは確定申告の際に行うことになります。 国税庁の確定申告書作成コーナーで確定申告書を作成するか、インターネット(e-tax)からでも申請することができます。
事前に、源泉徴収票と損害を証明する書類(災害関連支出の領収書、被災証明書、盗難証明書など)を用意しましょう。
損害保険がおりている場合は、保険金の金額が分かる明細書も合わせて用意する必要があります。
参照:国税庁ホームページ「災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」
災害減免法との違い
雑損所得と似たような制度に災害減免法という制度があります。
災害減免法とは、災害によって住宅や家財に損害を受けたときに、所得税が軽減免除されるというものです。
災害のあった年分の所得金額が1,000万円以下の人で、震災、風水害、火災等の災害によって受けた損害額が住宅または家財の価額の2分の1以上の際に、所得金額に応じて所得税額が軽減免除されます。
雑損控除と合わせて申請することはできません。
被害額が甚大になる際にこちらが適用されるイメージですが、実際には両方で算出し、控除額が大きくなる方を選ぶことになります。
まとめ
申告は義務ではないので、雑損控除を知らないままだと万が一の時に損をすることになってしまいます。
活用しないで済むのが一番な制度ではありますが、いざという時のために、雑損控除という制度があることを覚えておきましょう。