年末調整や確定申告の時期になると気になる「所得控除」。
一口に所得控除といっても、その内容は15種類に分類されます。
この記事では、15種類の所得控除の内容と控除額について解説していきます。
所得控除とは
所得控除は、所得税を計算する際に、課税対象になる所得金額から差し引くことができるものです。
個人の事情に合わせて、税の負担をなるべく公平にするために控除が設けられています。
源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」で控除額の合計金額を確認することができます。
所得控除の種類【全15種類】
所得控除は、以下の15種類に分類されます。
基礎控除
基礎控除とは、所得税を納付している全ての人を対象とした控除です。
合計所得金額に応じて控除を受けられます。
●控除額
・合計所得金額が2,400万円までの人…48万円
・合計所得金額が2,400万円~2,500万円までの人…48万円から段階的に減少
・合計所得金額が2,500万円以上の人…0円(対象外)
社会保険料控除
社会保険料控除とは、社会保険料(健康保険、国民年金、厚生年金保険、介護保険、雇用保険など)を納めた際に、支払った金額が控除されるものです。
納税者本人の支払分だけでなく、生計が同一の配偶者や親族の社会保険料も含むことができます。
●控除額
支払った保険料の全額
生命保険料控除
生命保険料控除とは、民間の保険会社に対する支払いを行った際に受けられる控除です。
生命保険料控除の対象となる保険は、以下の3つに分類されます。
・一般生命保険料
被保険者が死亡した際に保険金が支払われる保険(死亡保険、収入保障保険など)
・介護医療保険料
被保険者が入院や通院などをした際に保険金が支払われる保険(医療保険、がん保険、介護保険など)
・個人年金保険料
公的年金に上乗せして、老後の生活資金を自分で準備する保険(一定条件を満たす個人年金保険など)
●控除額
最大12万円
地震保険料控除
地震保険料控除とは、民間の地震保険の商品に対して地震保険料を支払った場合に受けられる控除です。
地震保険と火災保険のセットに加入している場合、所得控除の対象は地震保険料の部分のみとなります。 ●控除額 最大5万円
●控除額
最大5万円
医療費控除
医療費控除とは、年間の医療費が10万円を超えたときに受けられる控除です。
病気やケガなどによる通院・入院、歯の治療、妊娠・出産などにかかった医療費が対象となります。
納税者本人だけでなく、生計が同一の配偶者や親族の分もまとめることが可能です。
●控除額
(支払った医療費-保険金などで補填される金額)-10万円
※その年の所得金額が200万円未満の人は所得金額×5%
また、医療費控除の特例として「セルフメディケーション税制」が設けられています。
薬局などで指定の医薬品を買った場合、12,000円を超える部分の金額(限度額88,000円)について控除が受けられます。
医療費控除との併用ができない点、2026年12月31日までの特例である点には注意が必要です。
配偶者控除
配偶者控除とは、一定の条件を満たす配偶者がいる場合に受けられる控除です。
年間の合計所得金額が48万円以下(給与所得のみの場合は103万円以下)という指定があり、また納税者本人の合計所得金額と配偶者の年齢によって控除額は変動します。
●控除額
・一般控除対象配偶者…最大38万円
・老人控除対象配偶者…最大48万円(控除対象配偶者のうち年齢が70歳以上)
配偶者特別控除
配偶者特別控除とは、配偶者の所得が多いために配偶者控除が受けられない際、配偶者の所得金額に応じて受けられる控除です。
納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下、配偶者の合計所得金額が48万円~133万円以下(給与所得のみの場合は103万円~201万6,000円未満)などの条件を満たす必要があります。
●控除額
配偶者の所得金額によって最大48万円
扶養控除
扶養控除とは、配偶者以外に所得税法上の扶養親族がいる場合に受けられる控除です。
16歳以上の子供や両親、祖父母などを扶養しているケースで適用されます。
控除される金額は、扶養家族の年齢や同居しているかどうかで変わってきます。
●控除額
・一般控除対象扶養親族は38万円
・特定扶養親族は63万円(扶養親族が19歳以上23歳未満)
・老人扶養親族は最大58万円
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除とは、「小規模企業共済法」で指定された共済制度の掛け金を控除できるものです。
対象となる掛け金は以下の通りです。
・中小企業基盤整備機構との共済契約の掛け金
・個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛け金
・企業型確定拠出年金(企業型DC)の掛け金
・心身障害者扶養共済制度の掛け金
●控除額
支払った掛金の合計額
寄付金控除
寄附金控除とは、ふるさと納税や認定NPO法人などの対象となる団体へ寄付をした際に、その金額に応じて控除を受けられるものです。
基本的には、会社の年末調整では寄附金控除には対応していないので、自分で確定申告を行う必要がありますが、ふるさと納税に限り以下の制度が設定されています。
・ふるさと納税ワンストップ特例制度
寄付の対象が5自治体以下の場合は、確定申告をしなくても寄附金控除が受けられるという制度。
6自治体以上の場合や、医療控除など他の所得控除がある場合には、他の所得控除と合わせて確定申告が必要となります。
●控除額
「寄附金支出合計額」と「所得 ×40%」のいずれか少ない方-2,000円
ひとり親控除
ひとり親控除とは、扶養している子供がいる「ひとり親」が受けられる控除です。
婚姻歴がない未婚のシングルマザーやシングルファーザーも対象となり、合計所得金額が500万円以下などの条件を満たす必要があります。
●控除額
35万円
寡婦控除
寡婦控除とは、民法上の婚姻関係にあった夫と死別した、または離婚後に婚姻していない、夫の生死が明らかでない人が受けられる控除です。
ひとり親控除に該当しないこと、合計所得金額が500万円以下であることなどの条件を満たす必要があります。
●控除額
27万円
障害者控除
障害者控除とは、納税者本人や配偶者、扶養親族が、所得税法上の障害者の場合に受けられる控除です。
扶養控除では対象にならない16歳未満の扶養親族にも適用されることが特徴です。
●控除額
一人につき、
・障害者27万円
・特別障害者40万円
・同居特別障害者75万円
勤労学生控除
勤労学生控除とは、働きながら学校へ通っている場合に受けられる控除です。
合計所得金額が75万円以下、指定の学校の学生・生徒であることなどの条件を満たす必要があります。
●控除額
27万円
雑損控除
雑損控除とは、災害によって資産に損害を受けた場合などに受けられる控除です。
対象となるのは、自然災害(震災・風水害・例外・雪害・落雷など)や火災、害虫による災害、盗難、横領などを受けてしまった場合となります。
控除の対象となるのは「生活に必要な家具や現金など」で、別荘、貴金属や骨董などのいわゆる「ぜいたく品」は対象外です。
●控除額
以下のいずれか多い方
・(差引損失額)-(総所得金額等)×10%
・(差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円
まとめ
所得控除はその内容が15種類に分類されています。
配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除などはよく知られていますが、現在自分が対象となっていないものについてはあまり知られていないことが多いです。
いざという時に申請すれば受けられる所得控除があるということは知っておくようにしましょう。