2023年4月1日から、出産育児一時金(出産一時金)が50万円に増額されました。
出産費用の経済的負担が減ることになったので、これから出産を考える人の助けとなっています。
この記事では、出産育児一時金の概要、増額された背景、支給対象と申請方法について解説していきます。
出産育児一時金とは?
出産育児一時金とは、子どもを出産したときに受け取ることができる補助金のことです。
●出産一時金で支給される金額
・産科医療補償制度に加入している医療機関での出産・・・500,000円
・産科医療補償制度に加入していない医療機関での出産の場合・・・488,000円
公的医療保険制度(会社の健康保険や、国民健康保険)から受け取れる一時金で、出産時の経済的な負担を減らすことができます。
出産は病気やケガに含まれないため、本来は健康保険の適用対象外となり、全額自己負担となります。
ですが、出産には多額の費用がかかりますので、出産にともなう経済的負担を減らそうと設けられたのが、出産育児一時金です。
出産育児一時金の50万円への増額はいつから?
出産育児一時金の支給は1994年に30万円からスタートしました。
その後、出産費用の実態に応じて何度か引き上げの機会が設けられ、2009年に42万円になり、2023年には50万円に増額されました。
一度に8万円も引き上げられるのは、出産育児一時金制度が始まって以来最大となります。
大幅な増額が行われた理由は、出産費用が年々増加していることが一番の理由であると考えられます。
平均的な出産の費用は、2012年頃には42万円程度だったのに対して、2021年度では47万円程度となっており、約10年間で5万円近く増えています。
2012年では出産育児一時金で出産費用をカバーできることも多かったでしょうが、2021年では支給額プラス5万円が平均となっているため、出産費用がオーバーしてしまう方も多かったと考えられます。
5万円の自己負担は経済的に大きな負担となります。
そこで政府は出産への経済的負担を減らすため、出産育児一時金の引き上げを決定しました。
また、少子化対策を行い、社会全体で子育てを支援するという考えから、財源の仕組みも変わりました。
それまでは、74歳以下の方が加入する公的医療保険の保険料がメインの財源となっていましたが、2024年4月からは、75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度からも充てられることになっています。
出産育児一時金の支給対象者
出産育児一時金の支給対象は、前提として健康保険に加入している被保険者と、その家族(被扶養者)です。
その上で、「妊娠4ヶ月(85日)以上を経過した後の出産」が対象となります。
早産でも妊娠4ヶ月を過ぎていれば出産育児一時金が支給され、自然分娩・異常分娩(帝王切開、早産などの正常以外の分娩)による区別はありません。
また、死産や流産、人工妊娠中絶(経済的理由による人工妊娠中絶も含む)などで出産に至らなかった場合も、妊娠4ヶ月を過ぎていれば支給対象となります。
出産育児一時金の申請方法
出産育児一時金の申請方法は「直接支払制度」「受取代理制度」「事後申請制度」の3つに分類されます。
直接支払制度を利用する場合
直接支払制度は、出産育児一時金を、医療保険者(全国健康保険協会や健康保険組合、国民健康保険)から出産した病院などに直接支払う方法です。
出産をした人を介さずに、保険組合と病院の間でやり取りが行われますので、事前に多額の金額を準備する必要がないことがメリットです。
出産費用が50万円(産科医療補償制度未加入の場合は48万8,000円)を超えた場合は、50万円を超えた金額のみ病院の窓口で支払うことになります。
出産費用が50万円未満であった場合には、病院の窓口で支払う必要はなく、申請することで、その差額を請求することもできます。
小規模なクリニックや助産院などでは、直接支払制度が利用できない施設もあります。
【申請方法】
病院の窓口で保険証を提出し、直接支払制度を利用するための手続きを行います。 原則的に、健康保険組合などへの申請は必要ありません。
受取代理制度を利用する場合
受取代理制度は、出産育児一時金を、病院などが被保険者に代わって受け取る方法です。
直接支払制度と同じく、支給額を超える分だけを支払えばよいのがメリットです。
受取代理制度を利用できるのは、直接支払制度に対応しておらず、厚生労働省に届出をしている施設に限られます。
事前に病院側に確認をすることをおすすめします。
【申請方法】
出産前に健康保険組合などに申請を行います。
出産予定日まで2ヵ月以内に、指定の申請書に必要事項を記入して提出をします。
事後申請方式を利用する場合
事後申請方式は、自分で出産費用を準備して病院に支払う方法です。
いわゆる立て替え方式で、出産後に健康保険組合に請求して出産育児一時金を受け取ることになります。
事前に多額の費用を準備する必要がある点はデメリットですが、クレジットカードで支払う場合等に、カード会社のポイントがつく点はメリットと考えられます。
【申請方法】
出産した病院で出産費用を支払ったあと、健康保険組合などに必要書類を提出して申請します。
まとめ
出産育児一時金は、出産費用の増加にともない、定期的に増額されていっています。
現在は、産科医療補償制度に加入している医療機関での出産では50万円が支給されます。
出産費用が50万円に満たなかった場合、差額を申請することも可能です。
申請方法は産院によって異なるので、事前に確認をしましょう。