【光と闇の中で】波乱の入院生活 〜 失明寸前の危機 Part.2

おはようございます、夏井です。

人はどこに針を刺されるのが嫌か?という質問に対して、爪の間とか眼球とか答える方が多いですが、網膜剥離の手術をすると、このうちの1つが味わえます。

前回の続きになりますが、現在の網膜剥離の手術は全身麻酔ではなく、眼への点眼麻酔と軽い全身麻酔で行うようです。ちなみにタイで行った眼をシリコンで包む術式の時は、全身麻酔だったので何をやられていたか全く分かりませんでした。

今回は、眼に針を三本刺して内視鏡のように使いながら網膜を貼付け直していたようです。うっすらとボンヤリ、もうろうとした中で眼の中でごちゃごちゃ何かが動き、時々ピカッと光っているのが、レーザーで網を貼付けているところだったようです。30分で終わると言われた手術でしたが、結局2時間くらいかかってしまいました。

その後、部屋に戻って、マッサージをされる時に使うような穴の空いたベッドにうつ伏せで寝かされ、ずっとその体勢を維持するように言われました。これは眼の中にガスを入れていて、このガスの浮力で網膜を定着させるためです。ガスがどれだけ残っているかは検診の時に前を見るとわかります。

ちなみにこれは、医者から良いと言われるまでで、大体2週間くらいだろうと言われました。覚えているのは、その夜4~6人くらいの部屋の誰かがしきりに夜中にうめいていたことです。正直、相部屋はきついなぁと思ったものです。

次の日の朝ご飯も、検診を受けに行く時も、全部下を見た状態での活動です。人の脚しか見えません。前を向けるのは、検診の時だけでした。

初めての検診の時、目を開けたわけですが、その時全体が明るいのはかなりうれしかったものであります。ものが見えるわけではないのですが、やはり明るいだけで気が晴れるものです。

そしてそれから看護師に、昨日から要望している個室は空かないか聞いたところ、ちょうどその日に空くことが判明。眼科の患者はそんなに長く入院しないんですね。普通は白内障が1番多く、緑内障が少し長い程度みたいです。というわけで、念願の個室に入り2週間の入院生活を送りました。

とにかく、下向いているので、「体中が痛い」という難点以外、実は眼は1つも痛いことはなく、暇な時間を過ごしました。なぜか看護師がよく来てくれて、看護師の息子の相談やらなんやらにのったりしていました。

その時看護師たちに言われたことは、「あなたはものすごいポジティブだよねー。目が見えなくなりそうな人とは思えない。」

そうなんです、私が目が見えなくなりそうになった時に思ったことは、代わりの能力が上がるかもしれないということでした。眼の代わりにチャクラが生まれるんじゃないか、みたいな感じです。

実際に生まれたかは分かりませんが、何かを失った分だけ、違うことをできるようになったりすることがあるのを多々見てきたので、そう思うことにしていました。眼の分だけ鼻が利くようになるかもしれない、という風に。

特に眼は人間の感覚器の中でも1番使う部分なので、これを使えなくなるということはその分の能力を違うところへ振り分けられないかと考えたわけです。まあ、そんなこんなで無事退院の日を迎え、やっと家に帰ることになりました。2週間の入院生活でした。

ところが、やれやれと帰宅してから2日後、また悪夢が襲いかかります。子供と遊んでいたら、今度は上から黒いカーテンが降りてきました。

「あーあ、また剥がれたな」

すぐに病院に電話して、また同じ事の繰り返しを2週間ほどしました。晴れて退院し、また1月くらいで、今度はランチしている最中に、またしてもカーテンが降りてきました。再び病院に直行です。もはや病院では有名人になっていました。

ここで、とうとう病名が変更され「網膜剥離」から「難治性網膜剥離」となりました。いかんです、「難治性」って言葉の響きが良くないです。さらに、ここでやってもらった治療がなかなかシュールなものでした。

その日、主治医の先生は残念なことに予定がいっぱいで手術ができず、次の日の手術になったのですが、それまでの応急治療として、「眼の中の房水という水を抜きながら、これ以上剥がれないために特殊な何か、確かオイル?ガスのようなものを入れる」ことになりました。

つまり、両手で注射器を持って両方の針を右眼に刺し、片方で抜きながら片方を入れるという作業です。

もちろん麻酔はしていますが、目の前で座った状態で、「動かないでね」と言われて、「何分ですか?」「4分くらいかなぁ」という会話をしてから、そのまま2人見つめ合うように動かず4分間その作業をしました。

どうです、シュールでしょう?

そして3回目の手術は、ガスではなく、オイルを入れて数ヶ月間生活するものに変更されました。なんとその間、何をしても良いというのが驚きでした。お酒を飲んでも、飛行機に乗っても!

ガスの場合、飛行機やエレベーターなど、気圧の変わるものに乗ると眼が爆発してしまうので禁止でしたが、オイルにはそれもありませんでした。しばらくしたらオイルを抜く手術をしましょう、ということで、また10日ほどの入院が終わりました。

結局それから何度かの検査を経て、半年以上は眼にオイルを入れたまま生活をし、オイルを抜いて今に至ります。

やっと次の章に行けますね(笑)

手術のその後についてはまた次回。

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ドクターライフ協会 編集部

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