こんにちは、夏井です。
将棋の藤井聡太棋士が、八冠になりました!
私は羽生善治棋士と一つ違いでして、羽生氏が25歳で七冠制覇した時はかなり驚いたものです。その羽生氏が全盛期の頃、だいたい年間60-80対局していました。そしてその勝率はおよそ7割、一番いい時で83%でした。思ったよりも負けている感じですよね。対局数も5-6日に1度。
そしてこの藤井聡太棋士は、まだ21歳。去年64対局で勝率83%。そして通算でも83%・・・ つまり、羽生善治棋士の一番いい時の数字をデビュー以来ずっと続けているんです。
現在、強い棋士はほぼ20代と30代でして、ランキングトップ10にいる40才以上は、羽生善治棋士タダ一人という状態です。もはや歴史上でも最強と呼ばれるに近づいた藤井聡太棋士ですが、彼の強みについて書いている記事を見かけ、かなりに気になったので今回メルマガにしてみました。
今の将棋は、対局中にAIがどちらが有利か数字で見せてくれています。一手一手毎に、数字が動いていくわけですが、藤井聡太棋士は、たびたびほぼ負けの状態から突然90%有利な状態にひっくり返してしまいます。
現在のAIは、棋士と対局するとほぼ勝てると言われています。実際に、数年前からトップ棋士がAIに負けているので、もしかすると藤井聡太棋士でも負けるかもしれません。藤井聡太棋士自体が、AIを利用して日夜研究を重ねているとのことですが、AIの進化には藤井聡太棋士でも厳しいと私は思っています。
AIは1秒間に1億もの手を計算できるそうです。その中でどれが一番最適か探す作業を、疲れることなくやれます。将棋自体、何時間も持ち時間があって対局するわけですが、最後は、時間を使い切ると1分しか持ち時間がなくなり、すぐに答えを出さないといけなくなります。
そんなときでも、AIは焦ることなく60億もの手を計算して答えを導き出すわけですから、いつか疲弊してしまう人間ではなかなか勝てなくなってしまうわけです。
そんな中、藤井聡太棋士の強さを、AI将棋の開発者がこのように語っていました。
「良い手に早くたどり着く大局観」
「最善を指し続けられる精度の高さ」
「人間的に難易度が高い局面を提示する能力」
1番目の大局観は、もう彼だけ違う世界が見られるってことです。例えて言うなら、地図を持って目的地を探すのと、地図なしで同じ事をするようなものです。他の棋士よりもいい地図を持って、最適ルートを最短で探せるわけです、彼は。
2番目の精度の高さ、これはもうそのテクニックとスタミナですね。いわゆる高いリテラシーがあったとして、それを続けられる精神力と体力なしには到底敵わないですよね。この人は、強靱な精神力と体力、その上で日々培う技術力があるわけです。
そして最後の話が、私にとっては一番響きました。
1番目も2番目も、結局どんなことをしてもこれが大事なわけです。ビジネスでもスポーツでも、人間のすることのほとんどでこの二つが出来たら勝者になれます。が、この難度が高い局面を提示する能力というのは、かなりおもしろい能力です。
簡単に言うなら、相手を悩ませる能力です。相手がAIの場合、まるで悩まず、疲れません。だからAIは、ひたすらに最善手を探せるわけです。そして、最終的に一番最善と判断したことを実行します。でも人間は違います。悩み、疲れます。
さらに藤井棋士は、相手を間違えさせる能力に長けているのだそうです。定石ではなく、たくさんの選択肢を相手に与えて、そして間違えた選択をさせて、そこから大逆転するのです。人間の思い込みや期待、感情を利用するのです。
どうです? おもしろくないですか?
今、世界中が、AIに負けてしまうのではないかという話で盛り上がっていますが、対人間と言うことに関して言えば、その人に勝てばいいわけであって、1番目2番目の能力がいくら高くても、最後に間違えさせられたら負けます。そしてAIが得意なのは、1番目と特に2番目の能力なのです。
世界中を相手にするならともかく、目の前にいる人間を相手にするのならば、こういうやり方があるということは覚えておくべきでしょうね。
人のミスを待つのではなく、人のミスを誘い出す。いいテクニックですね。
ただこれは、普通の人がやっても通用しないテクニックではあります。が、すべて正攻法では、なかなか局面はひっくり返せません。
負けそうになっても乱戦に持ち込んで、なんとか勝てるような人生を送ってみたいと思っている夏井からの小話でした。