人件費が高いと感じている場合の対処法3選!人件費の内訳や人件費率の計算方法も解説|2024年版

経営者必見:人件費削減

経営していく上で、従業員は会社にとって重要な資源だと言えますが、一方で人件費の負担は会社のコストの中で大きな割合を占めます。

最近では、人手不足の解消と離職率の軽減を図るため、給与や賞与を引き上げる企業も多く、実に63.6%の会社が給与水準の引き上げに取り組んでいるというデータ(出典:中小企業白書2022年)もあります。

給与水準が上がることで法定福利費も上がるので、人件費の増加は経営者にとって悩ましい問題です。

この記事では、適正な人件費について考えていくために、人件費の調整の可不可、人件費の考え方、人件費が高くなっている際の対処法について記載していきます。

人件費の内訳は?

人件費は、従業員に支払う給与だけでなく「人の労働」に関わる費用全般が対象となります。

具体的には、以下の項目が人件費の対象となります。

・給与手当(基本給、通勤手当、残業手当、休日手当、住宅手当、役職手当などを含む)

・賞与

・役員報酬

・福利厚生費(健康診断費、結婚・出産祝い金、慶弔金、社員旅行費、会社負担の忘年会費、借上の社宅費用など)

・法定福利費(健康保険、厚生年金保険、社会保険費用、労働保険料など)

・退職金

人件費の分類

まずは調整によって削減できる人件費と、調整することができない人件費について見ていきましょう。

調整可能な人件費

調整できる人件費は以下のようなものが挙げられます。

・給与(所定内賃金)

・賞与

・福利厚生費

・人材採用費

・教育研修費

給与(所定内賃金)については、地域ごとに定められている最低時給を上回っていれば、就業規則によって定めることができます。

年功序列制、成果報酬制のバランスなどは自由に設定できるので、給与は経営者側で調整することが可能です。

就業規則や労働協約などに人件費についてルールを記載している場合は、変更する際に手続きが必要になる点には注意が必要です。

賞与については、支給ルールを原則として就業規則で定めなければならないことが『労働基準法第89条』で規定されています。

また、退職金については、一時金制度や企業型確定拠出年金制度などの種類の中から制度設計ができるようになっています。

とは言え、直接賃金に関するものは特に削減面においてはセンシティブですので、慎重に取り扱う必要があります。

比較的削減の検討をしやすいのは福利厚生ですが、社員のモチベーションアップなどが目的とされているので会社にとって逆にマイナスにならない程度に抑えるようにしましょう。

採用費や研修費なども状況に応じて増減しやすく、人件費の中では比較的コストを低く抑えている企業も少なくありません。

調整できない人件費

一方で、人件費の中には、以下のように労働基準法などにより調整・削減できないものがあります。

・法定時間外労働の割増賃金

・法定福利費

法定時間外労働の割増賃金は、「時間外労働:25%増」「深夜労働:25%増」「休日労働:35%増」と労働基準法で割増率が定められています。

法定福利費も、従業員との折半で支払うことが定められているため、経営者側の判断で変更をすることはできません。

目安となる人件費率の計算方法

人件費の計算には、「売上高人件費率」と「労働分配率」の2つの指標があります。

売上高人件費率

人件費の計算方法の一つである「売上高人件費率」は以下の式で求められます。

●売上高人件費率= 人件費÷売上×100

売上高人件費率では、売上高に占める人件費の割合を算出します。

総売上に対して人件費が占める割合を計算するので、割合が高ければ高いほど、人件費の負担が大きくなっているということになります。

売上高人件費率の平均値は、「小売店で20~30%」「サービス業で40~60%」程度となっています。

労働分配率

もう一つの人件費の計算方法「労働分配率」は、以下の式で求められます。

●労働分配率=人件費÷付加価値額×100

「付加価値額」とは、元値に対して企業が付け加えた価値のことを指します。

労働分配率は、付加価値額に対して人件費が占める割合のことで、生産性を測る指標となります。

例えば、人件費の合計が500万円、利益が1,000万円の場合、労働分配率は、500万円÷1,000万円×100で50%となります。

労働分配率の平均値は、「大企業で50%程度」「中小企業70%程度」となっています。

人件費が高いと感じている場合の対処法 3選

売上高人件費率や労働分配率を計算してみて、人件費が経営を圧迫していると考えられる場合は、何らかの対処を取る必要があります。

検討すべき3つの項目について見ていきましょう。

人件費の計算を細かく(時間単位)行うこと

人件費の計算を日数で行っていないでしょうか。

もしその場合は、人件費の計算を時間単位で行うことをおすすめします。

工数管理が細かく行えるようになり、無駄を省くことができるようになるからです。

また、かかっている時間や内容に応じて「仕事の一部を正社員からアルバイトやパートに切り替えられないか」「作業効率が悪いものを外注できないか」などについて検討することも人件費の削減につながります。

人件費削減のためのシステムを導入すること

作業をシステムに任せることができる場合、設備システム導入をすることも人件費の削減になります。

例えば、券売機やセルフレジの導入が該当します。

初期費用がかかることは一時的なデメリットですが、長いスパンでのコストを考えた時に、システムを導入することがプラスになる場合があります。

売上を上げること

人件費をあまり動かせない場合、経営における人件費の割合を下げるためには、売上を上げることが対策になります。

人件費を動かせる場合でも、法律が変わるなど企業の努力ではどうにもならないところで変更を余儀なくされることも考えられます。

そのため、自社の商品そのものの価値を高める、販売数や単価を増やす、などの売上を上げる施策については人件費の観点からも必要になります。

まとめ

人件費には、調整できるものと、調整できないものがあります。

調整できる人件費の中でも、福利厚生、採用費、教育費は削減を検討しやすい項目となっています。

人件費の計算は「売上高人件費率」と「労働分配率」の2通りで求めることができるので、自社の値を計算してみて、人件費が経営を圧迫していると感じた場合は対策を取るようにしましょう。

工数管理を細かく行うことによる無駄の削減と、売上を上げることの両方を考えていく必要があります。

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